あなたは「IPA」をご存知でしょうか。近年のクラフトビールブームで、耳にしたことがある方もいらっしゃるかと思います。IPAはビールの種類の中でもとても人気があるスタイルです。この記事ではそんなIPAについてご紹介していこうと思います。IPAについて知っている方も初めて聞く方もこの記事を読んでIPAについての理解をより深めていきましょう。

IPAとは
IPAとはIndia Pale Ale(インディア・ペールエール)の略称で、「アイピーエー」と読みます。
IPAの歴史は古く、1790年頃、ジョージ・ホジソンというロンドンの醸造家がイギリスからインドへの輸出用のビールとして考案したのが始まりとされています。当時イギリスはインドを統治するために大勢の人々をインドに派遣しました。ですが、当時のインドは飲み水の質が悪く、水の代わりとしてビールを必要としました。そこで、こうした人々のためにポーターという当時のイギリスで主要だったエールビールを輸出しました。しかし、約5か月間という長時間の船旅のため、インドにつく頃にはビールが傷んでしまいました。
ビールはとてもデリケートな飲み物で、日光や熱、振動などの影響で品質が落ちてしまうのです。
そこでジョージ・ホジソンは、通常のエールに大量のホップと麦芽を使用し、アルコール度数を高めたビールを開発しました。長時間輸送に耐えられるよう、一度の醸造で大量(通常の約4倍)のホップを使用し、更に輸送用の樽の中にもホップを投入しました。その結果、品質を保ったままインドに輸送することができるようになりました。このビールはイギリス産ホップのハーブや紅茶を思わせる香り、硬水を使用したスッキリとした飲み口が特徴です。また、この頃新しく登場した淡色の麦芽を使用したため、従来のペールエールよりも淡いものになりました。今までにない強い苦みと香りにが人気を博し、IPAという名前で一気に広まっていきました。
【おすすめ記事】ビールビギナー必見!初めての人でも飲みやすいビールとは?

アメリカンIPA
現在、IPAはアメリカで特に人気があります。イギリスからアメリカにIPAが伝わったとき、アメリカのほとんどの醸造所でIPAが作られるようになりました。多様なホップを組み合わせることで、ホップが持つ様々な特徴を活かすことができ、クラフトビールの多様性が表現しやすい点が、アメリカの醸造家たちの創造心を掻き立て、アメリカ各地に広まっていきました。
アメリカンIPAは従来のものより苦みを抑えたものが多く、柑橘系の豊かなホップの香りが特徴です。
様々な「IPA」
IPAは前述したようにとても人気のあるスタイルで、熱狂的なファンが生まれるほどです。それ故に様々なスタイルに形を変えながらファンの心を掴んできました。通常のIPAよりももっとアルコール度数が高く苦みが強いもの(IIPA)や、逆に苦みを抑えて飲みやすくしたIPA(NEIPA)など、様々な形に派生していきます。
そんなIPAの種類をご紹介していきます。
IIPA(インペリアル・アイピーエー)
IIPAは通常のIPAより更に多くのホップを使い、苦みや香りを強くしたIPAです。
「ダブルIPA」とも言われます。
アルコール度数は7~10%程度。力強いホップの存在感があり、アメリカのホップ愛好家にとても人気があります。
NEIPA(ニューイングランド・アイピーエー)
アメリカのニューイングランド地方で生まれたIPA。トロピカルフルーツのニュアンスを持つホップを使っています。強い苦みが特徴のIPAの中でも特殊なスタイルで、苦みを抑え、香りを最大限に引き立てようとした結果生まれたのがこのNEIPAと言われるスタイルです。このスタイルは名称のバリエーションが豊富で、外観が濁っているため「ヘイジー(Hazy=濁った)IPA」と言われたり、ホップ由来のジューシーな香りが感じられることから「ジューシーIPA」とも言われています。また、従来のアメリカのIPA(ウェストコーストIPA)と対比した呼び方で、「イーストコーストIPA」と呼ばれることもあります。
世界的に爆発的な人気を誇るスタイルで、日本でも2017年頃から流行し、国内各地のブルワリーが作り始めています。2019年現在でもより一層人気が広まっているスタイルです。
NEIPAに使われるホップは21世紀以降に出てきた、比較的新しい種類のホップを使っているのが特徴で、強い香りの出るタイプのものがよく使われます。
SessionIPA(セッション・IPA)
「セッション」はアルコール度数を低くしたビールによく使われます。つまり、セッションIPAはアルコール度数を抑えたIPAのことを指します。アルコール度数4~5度と低めの度数ながら、強烈なホップの香りと苦みを感じることができます。アルコール度数の高いビールは苦手だけど、IPAは好きという方におすすめのスタイルです。
IPAのおいしい飲み方
IPAは専用のグラスで飲むと、よりおいしく飲むことができます。IPAの特徴であるホップの香りと苦みをより感じられるような作りになっています。
またIPAはスッキリしたビールというよりしっかりした味わいが特徴のビールですので、キンキンに冷やして飲むというよりは、少し高めの温度(10℃前後)で飲むのがおすすめです。
変化し続けるIPA
IPAが考案されてから200年、これまで様々なスタイルに形を変え、楽しまれてきました。飲み比べるほど、奥深さを感じられこのスタイルはそれだけビール愛好家をひきつけるような魅力があります。これからも人々の趣向の変化に合わせて形を変えながら愛され続けるでしょう。クラフトビール業界を代表するスタイルの一つであるIPAに今後も目が離せません。


Novi Luna ノヴィ・ルーナ
軽くきめ細やかな繊細な泡と、柔らかい乳白色に白濁したビール。
素材にラベンダー、カモミール、オレンジの花、コリアンダーの種、オレンジピールなどが使われ香りがとても豊かな華やかなエールビールです。

Cluviae クルヴィアエ
靄がかかったような黄色のブロンドビール。
素材にりんごジャムを使用し穀物や果実のフルーティーさとほんのり酸味の爽やかな味わいが楽しめます。

Emigrante エミグランデ
アメリカのペールエールをヒントにつくられた深い金色のブロンドエール。
麦芽を100%使用し、香りと苦味のバランスがよくしっかりとした味わいです。

Magia d’Estate マジアデスターテ
ドイツのヴァイスビアをヒントに作られたウィートエールです。
オレンジピールの香りに泡は軽くきめ細やか。
乳酸菌の発酵による酸味とホップの苦味がアクセント。


Matthias マシアス
はちみつの香りと、豊かでクリーミーな泡のアンバーエール。
キャラメルのアロマ、果物、蜂蜜のオーガニックな味わいがしっかりと感じられます。

Bucefalo ブセファロ
力強い黒色、泡はクリーミーで赤褐色、芳醇なダークエールです。
チョコレート、コーヒー、リコリスの香りがホップの存在感と見事に調和。
ブラウンシュガーも効いていて嫌な苦味がありません。