ビールはこれまで「大衆のお酒」として多くの方に親しまれてきました。
手ごろな値段で誰でも気軽に飲むことができるため、私たちにとってとても身近な存在になっています。
一方で、一部の方の間では、ビールが苦手という声も多く、「苦い」、「炭酸が苦手」、「おじさん臭い」という意見をよく耳にします。
しかし、もしかするとそういった方はこれまでビールの中でも苦いタイプのビールしか飲んだことがない可能性があります。

日本人がイメージする従来のビールとは
実は最近まで、国内の大手ビールメーカーが造るビールはごく一部のスタイルのものに限られていました。
それはジャーマン・ピルスナーというスタイルのビールです。金色の澄んだ色、きめの細かい泡、苦みは強め、クリーンな味わい、炭酸のはじけるような爽快感、キレがあり、のど越しが良い、飲み頃は6~8℃と、低めの温度でぐいっとのむとおいしい、といった特徴があります。
恐らく、皆さんはこのような特徴のビールをパッと思い浮かべることができるかと思います。
今まで、国内の飲食店やスーパーで扱われるビールと言えばほとんどがこのスタイルのビールでした。
このことにより、日本ではつい最近まで、どのメーカーのビールを飲んでも特に大きな味の違いがないという状況が続きました。
私たちが持つイメージとして「ビール」=「炭酸の効いた、苦みが特徴のお酒」となってしまっていたのです。
しかし、「ビールは苦いものだ」というのは今までの古い常識にすぎません。本来、ビールには様々な種類があり、「ビール」を一括りにして一様に言い表すことはできないのです。

世界を見渡せば個性豊かなクラフトビールたちが存在している
クラフトビールの世界には皆さんが飲みなれたピルスナー以外にも飲みやすいビールはたくさん存在します。
世界のビールの中には苦いビールもあれば、甘いビールもあります。柑橘系の香りがさわやかなものや、チョコレートのような濃厚な味わいのあるビール、ワインのようなもの、日本酒のようなものまであります。
これらのクラフトビールを飲んだ方の中にはビールに対するマイナスのイメージが全く変わったという方も多くいます。
今まで飲んできたビールは苦手だったという方こそ、実は多種多様なクラフトビールの世界にはまってしまう要素があるかもしれません。
今回は今までビールが苦手だった方や、もっといろいろなビールを飲んでみたいけど、どれを選んでよいかわからないという方のために、数あるビアスタイルの中でも「飲みやすいスタイル」に絞って紹介していきたいと思います。

おすすめのビアスタイル
ヘーフェ・ヴァイツェン
まず一つ目にご紹介するビールはヘーフェ・ヴァイツェンというスタイルのビールです。
ヘーフェ(Hefe)はドイツ語で「酵母」、ヴァイツェン(Weizen)は「小麦」という意味です。
通常ビールには原料として大麦が使われますが、このビールには50%以上も小麦が使われています。淡色のものが多く、クリーミーな泡が立ち、飲み口は非常にまろやか、「バナナ」のようなフルーティーな香りとクローブやナツメグのようなスパイシーな香りが特徴的なビールです。ホップの特徴はそれほど感じられず、苦みも穏やかのため、ビールの苦みが苦手という方にもおすすめできるスタイルです。
ベルジャンホワイト
次に紹介したいビールはベルジャンホワイトです。
「ベルジャン」とは「ベルギーの」という意味です。つまり、ベルジャンホワイトはベルギーの白ビールを指します。
コリアンダーとオレンジピールが使われた非常にさわやかなビールです。ほかにも麦芽化していない小麦など、特徴的な原材料が使われています。
色合いはとても淡白で少し濁っています。たんぱく質の多く含まれる小麦を使用していることと、酵母をろ過しない製法がこのビールの特徴である濁りの原因です。
酸味と甘みがかすかに感じられ、まろやかな口当たりがとてもおいしいビールです。苦みがほとんど感じられないため、今までのビールに抵抗がある方も飲みやすいスタイルです。
セゾン
このビールができたのはベルギーの農家の方が夏の畑仕事の合間にのどを潤すために造ったのが始まりです。実はこのビールはスタイルとしての特徴が多様で一概に特徴を位置づけることが難しいスタイルでもあります。一般的には低アルコールのものが多く、飲み口も軽めのものが多いです。ベルギー酵母由来のフルーティーかつ、スパイシーな香りも特徴の一つです。飲みやすく、味のバラエティーに富んでいるため、ビール初心者の方も挑戦すると面白いビールだと思います。
フルーツビール
最後に紹介するのが、フルーツビールです。
フルーツビールは副原料にフルーツや、そのシロップが使われたビールのことを言います。
味わいは使われるビールによって異なりますが、ビールとフルーツの調和がとれたとても飲みやすいビールです。ビールの味は少し感じる程度で、フルーツの味がはっきり感じられるものもあり、食後のデザートにもよく合います。
日本ではあまり馴染みのないものですが、世界的に見ればフルーツビールは昔から作られている伝統的なビールなのです。
このようにクラフトビールにはピルスナー以外にも個性があり、初心者の方でも飲みやすいビールがたくさんあります。
苦いだけではないビールの魅力を発見すれば、ビールがより楽しめるようになります。
何が飲みやすいかは人それぞれですので、たくさんのスタイルのビールを飲み、自分にとって飲みやすいビールを見つけてみてはいかがでしょうか。

Novi Luna ノヴィ・ルーナ
軽くきめ細やかな繊細な泡と、柔らかい乳白色に白濁したビール。
素材にラベンダー、カモミール、オレンジの花、コリアンダーの種、オレンジピールなどが使われ香りがとても豊かな華やかなエールビールです。

Cluviae クルヴィアエ
靄がかかったような黄色のブロンドビール。
素材にりんごジャムを使用し穀物や果実のフルーティーさとほんのり酸味の爽やかな味わいが楽しめます。

Emigrante エミグランデ
アメリカのペールエールをヒントにつくられた深い金色のブロンドエール。
麦芽を100%使用し、香りと苦味のバランスがよくしっかりとした味わいです。

Magia d’Estate マジアデスターテ
ドイツのヴァイスビアをヒントに作られたウィートエールです。
オレンジピールの香りに泡は軽くきめ細やか。
乳酸菌の発酵による酸味とホップの苦味がアクセント。


Matthias マシアス
はちみつの香りと、豊かでクリーミーな泡のアンバーエール。
キャラメルのアロマ、果物、蜂蜜のオーガニックな味わいがしっかりと感じられます。

Bucefalo ブセファロ
力強い黒色、泡はクリーミーで赤褐色、芳醇なダークエールです。
チョコレート、コーヒー、リコリスの香りがホップの存在感と見事に調和。
ブラウンシュガーも効いていて嫌な苦味がありません。