
様々な味わいが楽しめるクラフトビールですが、その作り方をご存知ですか?作り方を知ったところで…なんて思わないでください。原料や製造過程などの知識を深めることで、よりクラフトビールに対して興味が湧くかもしれません。そして、知れば知るほどビール選びが楽しくなるでしょう。今回はビールの原料や発酵方法、製造過程についてご紹介します。
クラフトビールの原料
多種多様な味わいが楽しめるクラフトビールですが、ベースとなる原材料は同じ。水、麦芽、ホップ、酵母の4つがあればビールが作れます。では、同じ材料でどうして多種多様なビールが作れるのでしょうか。ひとつひとつ紐解いていきましょう。
水

水には軟水と硬水の2種類があります。軟水を使用すれば色の薄いビール(ピルスナー、ペールエールなど)が製造でき、硬水を使用すれば色の濃いビール(スタウト、シュバルツなど)が製造できます。なお、ビールの原材料のうち90%が水で占められているため、ビール作りにおいてとても大切な要素と言えます。
麦芽

麦芽とは、麦を発芽させたもの。麦には大麦と小麦がありますが、ビール作りで主に使用されるのは大麦です。麦芽の役割は、大きく3つあります。1つ目は発酵。酵母が発酵する際、糖やアミノ酸が必要です。その2つを麦芽が持っているため、酵母が発酵できアルコールが作り出されるのです。2つ目は色や香り。麦芽を乾燥させる際、温度によってビールの色味が変わります。当然、高温で乾燥させるほど色が濃くなります。また、乾燥の温度によって風味も異なり、温度が低ければビスケットのような風味、温度が高ければナッツのような香ばしい風味に。3つ目は泡。クリーミーな泡が特徴のビールですが、その泡は麦芽のたんぱく質とホップの苦み成分が関係しています。
ホップ

ビール独特の苦みを生み出しているのが、ホップ。受粉前のホップに含まれる「ルプリン」という粉が大きく関係しています。また、ホップは苦みだけでなく、香りや泡、ビールの腐敗を防ぐといった効果があるのです。なお、苦みの強いIPAは、元々イギリスからインドまでビールを運搬する際、腐敗を防ぐためにホップを大量に使用したことからできたビールと言われています。
酵母

先ほど少し触れたように、酵母はアルコールを生成するために必要です。麦芽に含まれる糖を分解することで、アルコールだけでなく炭酸ガスもできます。また、酵母は「上面発酵酵母」と「下面発酵酵母」に大きく分けられます。使用する酵母によって味や香りが左右されるため、ビール作りの大切な要因と言えるでしょう。
副原料

先ほど説明した4つの材料以外にも加えられるものがあります。それが副原料です。副原料にはビールの味を調整する、風味づけをするという2つの目的があります。ビールの味の調整には、米やコーンスターチ、糖類などが使用されます。これは、消費者の嗜好に合ったビールにするためです。また、風味づけにはハーブやスパイス、フルーツなどが用いられます。
ビールの種類を分ける発酵

前述のとおり、「上面発酵酵母」と「下面発酵酵母」のどちらを使用するかによって、作られるビールが変わってくるのです。上面発酵酵母を使用して行われる発酵のことを「上面発酵」と言います。その名のとおり発酵すると酵母が浮かび上がってくることから、名づけられました。15~20℃程度と比較的高温で発酵が行われ、フルーティーな香りや深いコクが特徴のエールビールが作られます。一方、下面発酵酵母を使用する発酵を「下面発酵」と言います。5~10℃程度の低温で発酵が行われ、爽快なのどごしとキレが特徴のラガービールが作られます。現在日本で流通している多くのビールが、下面発酵で作られたビールです。また、この2種類以外にも微生物を利用して作られる発酵方法もあります。
実際にビールが完成するまで
ビール作りに必要な原材料や発酵方法を簡単に学んだところで、実際にビールが完成するまでの作り方を見てみましょう。
- 発芽させた大麦を乾燥させ、ビールの色味や風味を決めます。
- 麦芽を細かく砕き、お湯に投入すると、糖が生成されます。これが麦汁です。
- 麦汁を沸騰させ、ホップを投入します。ホップの量や入れる回数で苦みや香りが変わります。
- 冷却したら、酵母を加えます。このとき酵母が、糖をアルコールと炭酸ガスに分解します。これを主発酵と言います。さらに温度を下げ、熟成させます。
- ビールをろ過し、酵母を除去したら容器に詰めて完成。
麦芽を入れるお湯の温度でアルコール度数が変わったり、酵母によって発酵の進み具合が変わったりします。大まかな作り方は同じですが、麦芽の量、酵母の種類、ホップの量など様々な要因が複雑に絡み合って、個性豊かなクラフトビールが作られるのです。
手作りビールを作るには
クラフトビールを楽しむうちに、ビール作りに興味を持った方もいるのではないでしょうか。大規模な装置がないと、ビール作りはできないと思うかもしれませんが、実は低アルコールビールの手作りキットが販売されています。冷却温度、器具の消毒などポイントを守ればビールが作れるので、ぜひ自分だけのビールを作ってみてはいかがでしょうか。
注)酒税法により、酒造免許を持たない人がアルコール度数1%以上のお酒を製造することが禁じられています。
クラフトビールの作り方まとめ
クラフトビールの製造背景にも注目
シンプルな原材料から作られるビール。しかし、シンプルであるがゆえに、材料選びは難しいのです。美味しいクラフトビールには、醸造家たちの工夫や苦労が詰まっています。ぜひその製造背景にも想いを馳せながら、味わってみてはいかがでしょうか。

Novi Luna ノヴィ・ルーナ
軽くきめ細やかな繊細な泡と、柔らかい乳白色に白濁したビール。
素材にラベンダー、カモミール、オレンジの花、コリアンダーの種、オレンジピールなどが使われ香りがとても豊かな華やかなエールビールです。

Cluviae クルヴィアエ
靄がかかったような黄色のブロンドビール。
素材にりんごジャムを使用し穀物や果実のフルーティーさとほんのり酸味の爽やかな味わいが楽しめます。

Emigrante エミグランデ
アメリカのペールエールをヒントにつくられた深い金色のブロンドエール。
麦芽を100%使用し、香りと苦味のバランスがよくしっかりとした味わいです。

Magia d’Estate マジアデスターテ
ドイツのヴァイスビアをヒントに作られたウィートエールです。
オレンジピールの香りに泡は軽くきめ細やか。
乳酸菌の発酵による酸味とホップの苦味がアクセント。


Matthias マシアス
はちみつの香りと、豊かでクリーミーな泡のアンバーエール。
キャラメルのアロマ、果物、蜂蜜のオーガニックな味わいがしっかりと感じられます。

Bucefalo ブセファロ
力強い黒色、泡はクリーミーで赤褐色、芳醇なダークエールです。
チョコレート、コーヒー、リコリスの香りがホップの存在感と見事に調和。
ブラウンシュガーも効いていて嫌な苦味がありません。