世界で飲まれているビールですが、その原料や作り方を熟知している人は多くはありません。しかしそれを知ってみると醸造家の仕事を垣間見ることができ、飲むビールも一味変わるかもしれません。大量生産には向かないことの多い、こだわりのこもったクラフトビールであればなおさらです。この記事ではビールの基本となる原料や醸造の工程などを解説します。

ビールの原料は4 + 1
ビールはモルト(麦芽)、ホップ、酵母、水で出来ています。どれもビールに欠かすことのできない大切な原料で、それぞれに役割があります。銘柄によっては副原料(フルーツやスパイス)も加えられています。ちなみに海外では副原料が使われているものもビールと考えられることが多いですが、日本においては副原料が使用されているものは発泡酒とみなす法律が定められています。早速各原料の役割について紹介します。

ビールの原料1: モルト(麦芽)
ビールの主原料こそモルトです。ポイントは麦ではなく麦芽であるという点です。大麦(小麦が使われることもあります)が麦芽になる際に生成されるのが酵素です。この酵素が、大麦に蓄えられているデンプンを糖に分解します。さらに酵母が発酵(糖がアルコールに変換されること)することにより、ビールのアルコールが生まれるのです。
麦を麦芽にした後は乾燥を行うのですが、このときの熱の加え方によって色や風味が変わってきます。これがビールの個性につながるのです。想像しやすいと思いますが、低温で焙燥されたモルトは色の薄い淡い風味のビールとなり、高温で焙燥、あるいは焙煎されたモルトは色の濃い香ばしい香りのビールとなります。

ビールの原料2: ホップ
アサ科のツル性植物であるホップも、ビールには欠かすことのできない重要な原料です。パッケージにホップが描かれている商品を見たことがある方もいるでしょう。ホップはビール特有の苦みを生み出すだけではなく、香り付けの役割もあります。さらに雑菌の繁殖を抑える効果もあるのです。その種類や量、投入タイミングによりビールの味が変わるため、ホップをいかにコントロールするかが醸造家の腕の見せ所です。

ビールの原料3: 酵母
ビールのアルコールや炭酸ガスを生み出す原料こそ酵母です。酵母は大きく上面発酵酵母と下面発酵酵母の2種類に分けることができます。多くの方がエールビールやラガービールという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。実は上面発酵でできたビールがエールビールで、下面発酵でできたビールがラガービールなのです。ちなみに、日本の大手ビールメーカーがつくるビールのほとんどがラガービールとなります。

ビールの原料4: 水
当然ながら水もビールの大切な原料の一つです。ご存知の通り、水は軟水と硬水の二つに分類できますが、軟水は淡い色のビールに適していると言われており、硬水は濃い色のビールに適していると言われています。作りたいビールのスタイルに合わせて、水を磨く(水の成分調整)という工程もあるのです。

ビールの原料5: 副原料
上記4つの原料に加え、よりビールの個性を生み出すために加えられることもあるのが副原料です。その種類はフルーツや、スパイス、チョコレートやコーヒーなど様々です。

クラフトビールの製造工程
- モルト作り
- モルト粉砕
- 糖化
- 煮沸
- 冷却
- 発酵
- 熟成
さて、上記にご紹介した各原料はどのタイミングでいかに使われるのでしょうか。続いてはビールの製造工程を解説します。
1.モルト作り
ビールづくりの第一歩は大麦をモルト(麦芽)にすることです。先述の通りこの工程によって、ビールのアルコールを生み出す酵素が出来るのです。
2.モルト粉砕
続いてモルトを粉砕していきます。効率良く糖化(デンプンを糖に分解すること)を行うためです。その際、外皮は粗く、内側は細かく粉砕するのがポイントです。
3.糖化
粉砕したモルトを約65度のお湯と混ぜ、麦汁をつくります。それにより酵素が働き、麦芽に含まれるデンプンが糖へと、タンパク質がアミノ酸へと分解されます。
4.煮沸
できた麦汁をろ過したら、今度は煮沸をします。このときにホップが投入されるのですが、段階的に行うのがポイントです。最初に投入するホップは苦み付け(ビタリング)のため、最後は投入するホップは香りづけのためです。
5.冷却
続いて固形物や凝集物を取り除いた麦汁を冷却します。エールの場合は約20℃、ラガーの場合は約10度で行われます。
6.発酵
麦汁の中に酵母を入れると発酵が始まります。これによりビールのアルコールと炭酸ガスが生まれるのです。上面発酵(エール)の場合は3~5日、下面発酵(ラガー)の場合は7~10日程度発酵させます。
7.熟成
いよいよ大詰めの熟成です。熟成することにより、発酵直後の味も粗く香りも十分でないビール(若ビールと呼ばれます)の味を調え、澄んだ色にしていきます。上面発酵では約2週間、下面発酵では約1か月の熟成期間が設けられています。

まとめ
クラフトビールの原料と製造工程を解説しました。少し難しく感じられる部分をあったかもしれませんね。しかしこちらを知っておくとビールを飲む際も想像力が働くものです。この香り高いビールにはモルトがどのタイミングで入れられたのだろうという具合に。そんなことを考えながら、こだわって醸造されたビールをゆっくりと流れる時の中飲む。それはとても贅沢な時間の使い方だと思いませんか。

Novi Luna ノヴィ・ルーナ
軽くきめ細やかな繊細な泡と、柔らかい乳白色に白濁したビール。
素材にラベンダー、カモミール、オレンジの花、コリアンダーの種、オレンジピールなどが使われ香りがとても豊かな華やかなエールビールです。

Cluviae クルヴィアエ
靄がかかったような黄色のブロンドビール。
素材にりんごジャムを使用し穀物や果実のフルーティーさとほんのり酸味の爽やかな味わいが楽しめます。

Emigrante エミグランデ
アメリカのペールエールをヒントにつくられた深い金色のブロンドエール。
麦芽を100%使用し、香りと苦味のバランスがよくしっかりとした味わいです。

Magia d’Estate マジアデスターテ
ドイツのヴァイスビアをヒントに作られたウィートエールです。
オレンジピールの香りに泡は軽くきめ細やか。
乳酸菌の発酵による酸味とホップの苦味がアクセント。


Matthias マシアス
はちみつの香りと、豊かでクリーミーな泡のアンバーエール。
キャラメルのアロマ、果物、蜂蜜のオーガニックな味わいがしっかりと感じられます。

Bucefalo ブセファロ
力強い黒色、泡はクリーミーで赤褐色、芳醇なダークエールです。
チョコレート、コーヒー、リコリスの香りがホップの存在感と見事に調和。
ブラウンシュガーも効いていて嫌な苦味がありません。