皆さんは「アンバーエール」というビールをご存知でしょうか。
アンバーエールはクラフトビールの中でそこまで知名度のあるスタイル(ビールの種類)ではなくどちらかと言えばマイナーな種類のビールです。
クラフトビールを扱っているスーパーでも、せいぜい1、2銘柄置いてあるくらいかと思います。
よほどクラフトビールが好きという方でなければ、アンバーエールについて詳しく知っているという方は少ないのではないでしょうか。
しかし、アンバーエールは麦芽から引き出される甘みとホップの程よい苦みがとてもよく調和したバランスの良いビールです。
アンバーエールは他のビールに比べて、ホップの特徴が弱く、普通のビールが苦手な方でも抵抗なく飲めるビールだと思います。
今回は、そんなアンバーエールについてご紹介していこうと思います。

アンバーエールとは
アンバーエールはアメリカの西海岸で生まれたビールで、イギリスのペールエールやスコッチエールをもとにして造られています。
ライトな味わいのラガービールが市場の大半を占めるアメリカでは、少し重めのアンバーエールがマーケティング戦略の観点から有利であるという理由で、マイクロブルワリーを中心に、現在でも多くの醸造所でこのスタイルが造られております。
ペール(淡い)エールなどと比べるとより色合いを濃くしており、アンバー(琥珀色)、または赤に近い色のビールが多いです。
アンバーエールは「クリスタルモルト」、「ミュンヘンモルト」、「チョコレートモルト」などの「カラードモルト」と呼ばれる、特殊な麦芽を使って色を付けています。
アンバーエールに限らず、このような麦芽を加えることで濃い色のビールを造ることができるのです。
アンバーエールの色の基準としては5.5SRM~17SRM(SRM=ビールの色度を表す数値)の範囲でなければならないという決まりがあるのですが、実際はメーカーによってさまざまなビールが「アンバーエール」として造られています。
アンバーエールは、ペールエールから派生したスタイルですが、ペールエールの特徴であるフルーティーな香りはそこまで感じられず、よりビターでカラメル香が強い仕上がりのものがほとんどです。
例外はありますが、ホップもあまり効かせていないことが多いです。
ペールエールよりボディは重めで、モルトの風味を効かせたものが基本のスタイルです。
アンバーエールの魅力
カラメルのような香ばしい麦の香りと芳醇な甘みのある味わいがこのビールの特徴です。
ホップの香りはそこまで強くないのですが、口の中にまったりと広がる麦の風味豊かな味わいが、ホップのほのかな苦みを活かし、後味に心地の良いホップの苦みを残します。
アンバーエールは麦の旨味とコク、そしてホップの程よい苦みのバランスが絶妙なビールです。
麦の甘味がホップの微かな苦みを引き立たせる。そして、ホップの苦みもまた、麦の風味を引き締めるように効いている。そんなバランス力のある味わいがこのスタイルの最大の魅力です。

人気のあるアンバーエール
ここで、アンバーエールの中でも、有名なビールをご紹介します。
それが、ニュー・ベルジャン醸造会社のファット・タイヤ・アンバー・エールです。
ニュー・ベルジャン醸造会社はアメリカのコロラド州フォート・コリンズで、1991年創業した昔からあるブルワリーです。
コロラド州は人口こそ少ないものの、米国の人口対醸造所の比率では上位10位に入っているビール大国です。
ロッキー山脈の山々から流れ出る清らかな水を使用して仕込んだビールはのど越しがよく、ご紹介するファット・タイヤ・アンバー・エールも例外ではありません。
「Fat Tire」の名前は、創業者が醸造所を巡回していた時に乗っていたマウンテンバイクに由来しています。
ファット・タイヤ・アンバー・エールの特徴は、甘いビスケットのようなカラメルモルトの風味と、ホップのフレッシュな香りと苦みのバランス。
World Beer Cupでも受賞経験のあるビールです。
このビールはあまりにも人気が出てしまい、後にブルワリーのロゴにもなっています。醸造所の名前である「New Belgium」より、「Fat Tire」の方が有名になってしまい、その圧倒的な状況を受けて、ブルワリーの中でそういった決断になったようです。
いろいろなアンバーエール
こんな魅力のあるアンバーエールですが、前述したとおり人気のあるスタイルが故に、現在は様々なアンバーエールがメーカーによって造られています。
ホップの香りを効かせたものや強い苦みを残したもの、ラガータイプのビールのように低温で発酵する醸造方法を取るものなどもあります。

アンバーエールなマイエッラビール
アンバーエールのマイエッラビール「マシアスは」Brussels Beer Challenge(ブリュッセルズ・ビア・チャレンジ)は、ビールの本場でもあるベルギーで開催されている国際的なビールのコンテストでブロンズメダルを受賞しています。
アンバーエールを飲もう
今回ご紹介したアンバーエールはそこまで癖も強くなく、ホップの苦みよりは、麦の甘い味わいがよく出ているものが多いので、いわゆるピルスナーのようなザ・ビールの苦さが苦手という方でも飲みやすいスタイルかと思います。
まだ飲んだことがないという方は是非、飲んでみてください。

Novi Luna ノヴィ・ルーナ
軽くきめ細やかな繊細な泡と、柔らかい乳白色に白濁したビール。
素材にラベンダー、カモミール、オレンジの花、コリアンダーの種、オレンジピールなどが使われ香りがとても豊かな華やかなエールビールです。

Cluviae クルヴィアエ
靄がかかったような黄色のブロンドビール。
素材にりんごジャムを使用し穀物や果実のフルーティーさとほんのり酸味の爽やかな味わいが楽しめます。

Emigrante エミグランデ
アメリカのペールエールをヒントにつくられた深い金色のブロンドエール。
麦芽を100%使用し、香りと苦味のバランスがよくしっかりとした味わいです。

Magia d’Estate マジアデスターテ
ドイツのヴァイスビアをヒントに作られたウィートエールです。
オレンジピールの香りに泡は軽くきめ細やか。
乳酸菌の発酵による酸味とホップの苦味がアクセント。


Matthias マシアス
はちみつの香りと、豊かでクリーミーな泡のアンバーエール。
キャラメルのアロマ、果物、蜂蜜のオーガニックな味わいがしっかりと感じられます。

Bucefalo ブセファロ
力強い黒色、泡はクリーミーで赤褐色、芳醇なダークエールです。
チョコレート、コーヒー、リコリスの香りがホップの存在感と見事に調和。
ブラウンシュガーも効いていて嫌な苦味がありません。